ピーチマン日記

ベトナム、サイゴンから、日記をお届けします。

ドキュメント ヴェトナム戦争全史」読了。

ドキュメントヴェトナム戦争全史 (岩波現代文庫―社会)

「ドキュメント ヴェトナム戦争全史」読了。「物語 ヴェトナムの歴史 」の作者であり、元読売新聞記者の小倉貞男さん著。「物語 ヴェトナムの歴史」は紀元後40年のハイバーチュンの乱から始まり、現在のヴェトナム社会主義共和国の礎、ホー・チ・ミン登場へと繋がるベトナムの歴史を記した著だったが、本著は日本が連合国のポツダム宣言を受け入れ、無条件降伏をした直後の1945年8月中旬、ホー・チ・ミンらによって結成されたヴェトミン(ベトナム独立同盟)がハノイにてクーデターを起こし、ヴェトナム民主共和国臨時政府を樹立した所から始まり、その後ヴェトナムが真の独立を勝ち取ったヴェトナム戦争と、その後の第三次インドシナ戦争までに焦点を当てた著。


> ヴェトナム戦争とは何であったのか。ヴェトナム戦争は、第二次世界大戦の後、最も長く、激しく続いた戦争として記録されている。ヴェトナム戦争と言えばおそらく、米国とヴェトナムの戦争、自由世界と共産世界との戦争、米国と中ソとの代理戦争、世界最強の軍隊とゲリラの戦争、核戦争以後といえるような電子兵器戦争の実験場などといった様々な答えが返ってくるだろうが、そのどれもが正しいと同時に、それぞれがある局面を表現したものに過ぎない。


上記は本著の序文にあるが、上記でも充分ではなく、カンボジアラオスを踏まえたインドシナ半島の緊張という視点や、ベトナム国内に於ける共産主義者民族主義者、その他愛国者との関係(それがヴェトコンではなく、南ベトナム解放民族戦線という形になった)等、様々な背景がある。


ただ、本著の全編にわたり共通するのはヴェトナム国民の救国、真の独立への願いであって、その一点によってヴェトナムは戦争に勝つことができたのだと感じる。本著は多くの文献からの引用も然りながら、ヴェトナム戦争の当事者達へのインタビューに多くの部分を割いており、数字やその当時のマスメディアの情報だけではなく、日本語翻訳とはいえ、戦争当事者達の気持ちが伝わってくる。


特にベトナム政府より即発禁処分を受けた『30年戦争の結末・B2戦区の輝かしい勝利』の著者であり、1975年のサイゴン総攻撃の時は人民軍総参謀長ヴァン・ティエン・ズンの下で副司令官を努めたチャン・ヴァン・チャのサイゴン総攻撃の話の一部


> 「(サイゴン総攻撃の)特別攻撃部隊のなかにはたった一人の部隊もいくつかあった。一人の部隊で特定の目標を攻撃する事は実際には不可能だ。しかし、この人達は(以前よりサイゴンに潜入、生活し)普段から民衆の信頼を得ていたので、一人でも都市施設、官庁を占拠できた。友人たちが助けてくれたのだ。地方軍の役割は(北ベトナム)正規軍だけの戦争ではないことを証明している。サイゴン攻略作戦には、全ての部隊、全ての兵士、民衆が立ち上がって目標に向かった。戦った。」


上記にはヴェトナム戦争に関する多くの示唆が含まれていると感じる。現在のヴェトナム社会主義共和国の礎、ホー・チ・ミンは1975年の独立を待たずして1969年に亡くなりました。最後に、彼の秘書を長く務めたヴ・コアンの本著内のコメントの一部と、南ベトナム解放民族戦線創立者の一人であるズン・キン・ホアのサイゴン陥落後の政府に関するコメント(彼女は新政府に厚生大臣を要請されたが断り、強い要請により次官として入閣したが6ヶ月で辞任した。現在は民間ボランティア機関にて貧困と戦う農村開発にあたる)を


「(ホー・チ・ミンの)日常生活は実に質素だった。宿舎の庭に果樹を植え、果実を来客に贈っていた。食堂ではいつも皆一緒で、セルフサービスだった。下着も自分で洗っていた。たくさんの外国語を知っていたが、煙草のお盆に名刺大のタバコ巻き紙を置いて、それに外国語の単語を書いて覚えていた。バック・ホ(ホ・おじさん的な意)の演説はとてもわかりやすかったが、『まだ、教育のレベルが低いのだから、指導者はわかりやすい演説をしなければならない』と言っていた。演説、論文を書くときは、まずボディガード達に読んで聞かせる。彼らが理解出来るとはじめて新聞に書いた。だから外交問題でもボディガードがわかるように簡単な方法で書いた。私が身近に見たバック・ホの一生は、民衆のことだけを考え続けた人生だった。」

「(ベトナム共産)党の中では『ヴェトナムはヴェトナムなのだ』と言います。(しかし)私は言います。『ヴェトナムはヴェトナムだけではない。不幸はヴェトナムだけのものではない。多くの人々、国々のこと、全世界の事を考えてほしい』。私には2つの戦いがある。一つは貧乏、一つは無知です。最も大切な事は民主主義の為に戦う事です。民主主義が達成できなければ何もできない。全ての事についての基本なのです。バック・ホは、自由と民主主義を知っていました。貧困と無知を解決しなければその国の発展は出来ない。」

 

ドキュメントヴェトナム戦争全史 (岩波現代文庫―社会)

ドキュメントヴェトナム戦争全史 (岩波現代文庫―社会)